【建築】建築におけるデザインとコストの配分

2025.01.05

お知らせ

昨今話題の建築物の劣化とデザインについての関係を仕上げ屋目線で考えます。

予算がなくて仕上げの仕様が変更になることは日常的で、工期も予算もギリギリなことは珍しくありません。

それでもベストを尽くし引き渡せば、劣化していくのは当然のことのように思えます。

特に建築物にアート性を持たせたものは観るものを魅了しますしワクワクします。

人の目に触れるような建築にこそ長く美観を保つ工夫が必要なのかもしれません。

学生時代デザイン強めのガラス張りの校舎でしたが、災害時は非常に脆く危険で、夏は以上に熱くクーラーガンガンでエコとは程遠いものでした。

当時は気にしていませんでしたし、そのデザインが充実した学生時代の源泉であることは私の中の事実です。

建築におけるデザイン重視の仕上げとコスト配分の影響

建築物の設計では、機能性や耐久性、コストの制約とともに、デザイン性が重要な要素として重視されます。

しかし、特にデザインを最優先し、仕上げに多くのコストを割いた場合、建築物の完成後に予期せぬ課題が生じることがあります。

以下に、デザインを重視した結果としてのメリットとデメリット、その具体例や課題を解説します。


1. デザインを重視し仕上げにコストを割く理由

建築のデザイン重視は、視覚的なインパクトや建物の象徴性を追求するために行われます。

(1) 視覚的なインパクト

  • 美しい外観やユニークなデザインは、街並みに調和しながらも際立ち、建物自体が観光資源や地域のランドマークとなる可能性があります。
  • デザイン性が高い建物は、周辺地域の価値向上にも寄与します。

(2) ブランド力の強化

  • 商業施設や公共建築物では、特徴的なデザインが利用者の記憶に残り、施設や地域のブランドイメージを高めることができます。

(3) 建築家の創造性の発揮

  • 著名な建築家が設計する場合、独自性の高いデザインが重要視され、仕上げの素材や技法に大きなコストが割かれることがあります。

2. デザイン重視の仕上げがもたらすメリット

(1) 高い評価と注目度

  • 特徴的なデザインは、人々の注目を集め、建物が完成した瞬間から高い評価を受けることが多いです。
  • 美術館や文化施設では、建物そのものがアートとして機能することもあります。

(2) 利用者体験の向上

  • 洗練された空間デザインは、利用者に快適さや特別感を提供し、満足度を向上させます。

(3) 経済的な波及効果

  • 特徴的な建物は観光資源として活用されることで、周辺地域の経済活動を活性化させることがあります。

3. デザイン重視の仕上げがもたらす課題

デザイン性に重きを置きすぎた場合、以下のような課題が発生することがあります。

(1) 耐久性の低下

  • デザイン性を優先するあまり、耐久性や維持管理を軽視した素材が選ばれることがあります。例えば、木材やガラスなどのデザイン素材は環境の影響を受けやすく、劣化が早まる場合があります。

(2) 維持管理コストの増加

  • 高級な素材や特殊な仕上げ技法が使用された場合、維持や修繕のためのコストが大幅に増加することがあります。
  • 特殊なデザインのため、一般的なメンテナンス方法が適用できず、専門業者への依頼が必要になることもあります。

(3) コスト配分の偏り

  • 仕上げにコストを割きすぎた結果、構造部分や設備機能に十分な予算が確保されず、耐震性や断熱性能などの基本的な機能が犠牲になる可能性があります。

(4) 社会的批判

  • 公共建築の場合、豪華なデザインや仕上げに過剰なコストを割くと、「無駄遣い」として批判されることがあります。
  • 住民の実用的なニーズよりもデザインを優先した場合、利用者からの不満が生じることもあります。

4. 実例: デザイン重視がもたらした結果

(1) 建築家K氏設計の建築物

  • 外装に木材を多用した建築物が特徴的ですが、一部で使用された木材が早期に劣化し、大規模な修繕が必要になったケースがあります。
  • 某市役所では、防腐処理が不十分な木材が使用され、わずか6年で劣化が進行しました。

(2) 某競技場(東京都)

  • 外装の木材使用は高く評価されましたが、カビの発生や美観の維持が課題となっています。維持管理コストの増加が懸念されています。

(3) 海外のランドマーク建築

  • スペイン・バルセロナの「サグラダ・ファミリア」では、芸術性と象徴性が重視される一方、完成までの期間が長期化し、膨大なコストが必要となっています。

5. 解決策と提言

(1) 耐久性とデザインの両立

  • 素材選びにおいて、デザイン性だけでなく耐久性や環境への適応性も考慮することが重要です。
  • 新素材やコーティング技術の活用により、美観と耐久性のバランスを取ることが可能です。

(2) 維持管理を考慮した設計

  • メンテナンスのしやすさを考慮したデザインや素材選びを行い、長期的なコストを最小化する工夫が求められます。

(3) 利用者ニーズの反映

  • 建物の利用目的や地域住民の意見を反映し、実用性とデザイン性を両立させることが重要です。

6. 結論

建築においてデザインを重視し、仕上げにコストを割くことは、視覚的なインパクトや利用者の満足度向上に寄与します。

しかし、長期的な視点での維持管理や耐久性を軽視すると、予期せぬ課題が生じることがあります。デザインと機能性をバランスよく考慮した設計が、持続可能な建築物の実現には不可欠です。

個人的に建物探訪することも楽しみのひとつです。

劣化も含めてその建物の歴史です。テーマパークに行くとその劣化(エイジング)はストーリーであり、その技法がパークを形成する一部となっています。

仕上げを追求する身としては予算もデザインも機能も全て必要不可欠なものです。

施主になったら、優先順位、コンセプト、動線をしっかりと組み立てた上で施工することをお勧めします。


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合同会社 装麗 代表 藏原